~消えた父 そして発覚した多額の借金。
救ってくれた「遠い親戚」の手。
昼は専門学校、夜は仕事―――すべてを抱えて、それでも進んだ物語~
消えた父と、幼い日の記憶
父が家を出たのは、まだ自分が゛記憶゛を持つ前のことだった。
幼い頃の記憶に、父の姿はほとんどない。
物心がつくよりも早く、大黒柱が消えた家では、叔母と祖母が、静かに、しかし力強く生活を支えてくれた。
貧しさを感じなかったのは、きっと母を含め、その二人が「幼い自分に不安を悟らせまい」としてくれたからだ。
そんな人生の中で、唯一゛父の温度゛を感じたのは、小学校2年生の法事だった。
突然帰ってきた父。
膝の上に乗せられ、オレンジジュースを飲んだ。
あの時の膝の硬さ、ほのかな体温、グラスに映る光―――
なぜか、その一瞬だけが、自分にとっての「父の記憶」として鮮やかに残っている。
やり直しを決めた日
それから数年。小学校高学年になった頃、父は再びふらりと戻ってきた。
小さな頃に゛父゛としての存在を知らずに育った自分はどうしても馴染めなかった。
どう接すればいいか分からなかった。家族として過ごしたはずなのに、距離が縮まらなかった。
距離が縮まる前に、また突然、父はいなくなった。
兄や姉は多少、父に育てられた記憶があったらしいが、自分にとって父はいつも「現れては消える存在」だった。
しかし思春期にはつまずき、いろいろなものが重なり、高校を中退した。
未来も見えず、何を目指すべきかも分からなかった。何者にもなれない自分が怖かった。
それでも、心のどこかで「このままでは終われない」という思いが消えず、大人になって通信制に入り直した。
働きながら、眠い目をこすりながら、少しずつ未来への扉を開けた。そしてついに高校卒業を掴んだ。
その瞬間、自分の人生がようやく動き出す気がした。
発覚した多額の借金
「ここから、自分の人生を作るんだ」そう思い始めた矢先・・・父が残した゛多額の借金゛が発覚した。
―――人生は、簡単には味方してくれなかった。
それが突然、自分の肩にのしかかった。兄姉は助けてくれなかった。
誰も代わりにはなれなかった。目の前にあるのは、どうにもならない現実だけだった。
救ってくれた、遠い親戚の手
そんな絶望の中で、一本の電話が鳴った。
「あなたのおじいちゃんに昔、世話になったんだ。恩返しをさせてくれ。家だけは絶対に守る」
そう言ったのは、不動産屋を営む、゛ 遠い親戚 ゛だった。
その人は、こちらが家を失わないように、自分ではわからない所で、本気で戦ってくれていた。
その事実が、胸に熱く突き刺さった。
人生で初めて、「家族でない誰か」に救われた瞬間だった。
昼は専門学校、夜は仕事
それでも借金は残る。
未来を変えるために資格がどうしてもほしかった。
昼は専門学校、夜は仕事。使える時間も体力も限界まで削り、学費も生活費も返済も、一つひとつ自分で背負った。
眠気で教科書の文字が歪む日もあった。手を震わせながら現場に立った日もあった。疲れで立てない朝もあった。
それでも止まらなかったのは、「人生を変えると決めた」その覚悟があったからだあの時の自分には「投げ出す」という選択肢はなかった。
支えられた側から、支える側へ
そんな日々の中で、治療の仕事に出会った。痛みや不安に寄り添い、前へ進む力を与える仕事。
不安を抱える誰かの背中を、そっと押す仕事。かつて誰にも頼れなかった自分が、「こんな人に出会いたかった」と思える存在になりたいと強く感じた。
振り返れば幼い頃の一瞬の父のぬくもり。突然戻り、戻っては消えていく家族の不安定さ。通信制高校で掴んだ ゛やり直しの力 ゛。
昼に学び、夜に働き続けた継続力。誰も助けてくれなかったという現実が育てた覚悟。そして、遠い親戚が命綱のように差し伸べてくれた゛救いの手゛。
そのすべてが、今の自分を作り、今の理念の根っことなっている。
地域の声に、最初に気づく存在でありたい
私は訪問鍼灸マッサージの世界だけで終わるつもりはありません。
地域には、昔の私のように、誰にも言えず抱えている人がまだまだいます。
独居で孤独を抱える人、コニュニティに入れず行き場を失っている人助けを求めても届かない声が、まだまだ山ほどある。
私はそこに本気で向き合うなぜなら、私自身極限の窮地から救ってもらったおかげで、今の自分があるからだ。
その時の感謝の気持ちは決して忘れてはいない。
それからの人生でも、何度も壁をぶち破り、自分の力で道を切り拓いてきた実体験があるからだ。
私は中途半端は嫌いだ。やるなら徹底的にやる。『突き抜けた違いで新しい風を起こし、頂点を掴む』。
この理念を胸に、みんなと共に生きていく。成果が出るまでやり切る。その姿勢だけが本物の信頼を生むと知っている。
介護・医療・福祉・地域づくりの未来へ
みんなと共に゛頼られる存在゛として生きていく。困っている人の前に立って、受け止めて、動いて、その人の人生を変えるきっかけを必ずつくる。
私たちは訪問鍼灸マッサージというフィールドからスタートし、介護・医療・福祉・地域づくりの未来の゛当たり前゛を作っていく。
地域の゛気づき゛とつながりをつくる存在になる家に入らなければ見えない現実がある。
孤立・体調の変化・生活の乱れ・不安・SOS・誰にも届かない悩みが、静かに積み重なっている。
私たちそこに最初に気づく人間でいたい。そして、家族・行政・ケアマネ・地域のつながり。
その人が安心して暮らせる流れをつくりたい。気づきがあれば救える命がある。つながりがあれば地域は強くなる。
訪問鍼灸マッサージは、その入り口にしかすぎない。ここから地域全体を動かし、住みやすく、安心できる町をつくる。その中心に立つ。
私たちは突き抜ける。突き抜けた違いで新しい風を起こし、゛頂点を掴むまで゛一切止まらない。これは仕事じゃない。私たちの使命だ。